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股関節の痛みについて

股関節は座ったり歩いたりする時に動く関節ですが、体の上半身を支えなくてはいけないので非常に丈夫に強く出来ています。しかし、一度問題を起こしてしまうと日常生活に大きく支障をきたします。少し動きがおかしかったり、痛みが出たりした場合には症状を知る上で早めの診察や治療をおすすめします。

ほとんどの症状はひどいものではありませんが、中には日常生活や将来に問題がでるものもありますので、おかしな場合は当院や医療機関などに早めに相談して下さい。

股関節炎

何かの原因で股関節が炎症を起こしてはれている症状を股関節炎と呼びます。

症状

軽度の症状であれば「股関節がはれぼったく重たい」程度のことですみますが重度になると体重をかけると痛みが出たりして歩けなくなるばかりではなく、炎症のため関節の中が関節液でいっぱいになり腫れ上がり、痛みで関節が動かせなくなります。中には熱を伴うことがあり、体温が上がることもあります。

原因

多くの原因の1つとしては「関節に負担がかかりすぎた」というものです。負担がかかりすぎることとしては、いつもより上り下りの動作や水泳などの運動、歩き過ぎや股関節をいつもとは違った変な使い方をして炎症の原因となります。
股関節にもともと変形があり、生まれつき形が普通とは違う形をしている方は、構造的に関節が弱いので、股関節炎を起こしやすくなります。専門的には変形性関節症といいます。
他には子供に多く起こることですが、風邪を引いたりして熱が出た時に股関節も一緒に腫れ上がり、股関節炎の原因となります。原因が分からなく、話が上手に出来ない小さな小児は股関節の痛みをお母さんに伝えられなく「ただ泣きじゃくってる」という事があります。お母さんは子供が泣き止まないのでどうして良いのか分からず不安になる事がありますが、子供の体温を測ったりする事と、少しでも股関節を動かすと泣き方が痛みのせいで大きくなるので分かるかと思います。これは専門的に単純性股関節炎といいます。
中には股関節自体に細菌などが入り込み炎症が起きることもあるので注意が必要です。(専門的には化膿性関節炎といいます)

対策と治療

股関節に限らず、他の関節にも言えることですが、負担を掛けすぎないことが必要です。学生などでスポーツが盛んな時期でも必要以上のトレーニングをしすぎないことです。鍛えることで筋肉が付いて運動能力は上がりますが、負担を掛けすぎて鍛えようとすると逆に筋肉は萎縮して小さくなり、筋肉で支えきれなくなって関節に負担がかかり関節炎を起こすことになります。
股関節の変形などがあり、関節が弱い方は負担を掛けないことは大切なことですが、負担を掛けないで大事にしすぎている事はよくありません。関節の変形がある人でも関節が動く範囲で動かしてあげたり、股関節周りの筋肉を伸ばしてあげたりすることが大事です。なぜなら、関節の滑りをよくし軟骨の栄養源となる関節液が関節を動かすことによってにじみ出てくるからです。体重をかけないように座ったり寝ながら関節を動かしたりしながら筋肉もしっかりと伸ばすことによって関節の変形の進行を遅らせ長持ちさせることができます。
風邪を引いたりして関節炎を起こしている場合もある事と、細菌の炎症などの原因もありますので、医療機関にての受診や当院にてご相談ください。

東洋医学(鍼灸)と整体による治療法

股関節の痛みは、その多くが股関節につながる筋膜の炎症による「ゆちゃく」が原因となっているようです。
特にその動きをする上で①使われる筋肉と②使われる筋肉の反対側にある筋肉(拮抗筋)を探っていくと、硬結(筋膜の癒着)が見つかる事が多いようです。
見つけられたら、それらのゆちゃくを鍼灸あるいは整体の手技によって”はがして”行きます。
問題を引き起こしている硬結は、その場所の経絡ライン(東洋医学で言う「ツボ」のライン)上に、存在する事もありますので、股関節回りのチェックだけでなく、そこと連なるライン上も精査することが重要です。

弾発股

股関節炎とは違い、股関節の周りの筋肉に付いている腱が引っかかる症状です。

症状

歩いたり走ったり、階段の上り下りで股関節を動かしている時に股関節の横の部分で「ポキポキ」と音が鳴ります。はじめは音が鳴るだけで痛みがないですが、腱が股関節部分の骨に引っかかって音が鳴っているため、繰り返し引っかかり続けると腱の部分やその周りが腫れてきて炎症を起こし痛みを伴います。その時には歩いたりするだけで炎症を起こしている腱が引っかかるので簡単に音と共に痛みが出ます。

原因

お尻周りの筋肉に力がうまく入らなかったり、陸上トラックなどのカーブやバスケットボールやサッカーなどでのサイドステップ動作によって股関節が内転(脚が内側に曲がる)されたりして、股関節横の筋肉や腱が引っ張られ股関節横の出っ張った骨に引っかかります。そうしたことによって股関節を動かした時に音が鳴ります。
実はこの部分には引っかかりにくくするためと引っかかったショックを和らげるための水まくら(滑液包:かつえきほう)があります。多少の刺激においてはしっかりと衝撃を吸収する役目を果たしますが、強度な刺激や繰り返される刺激によってこの滑液包の中に水がたまり腫れるため、これも腱が引っかかる原因となります。

対策と治療

日常生活でこの症状が出る方は、お尻周りの筋肉の強化と一本足で立っても支えられるような股関節や筋肉の使い方を覚えることが大切です。他に運動によって症状が起きる方は、外脚でははく内脚の使い方をおぼえることが大事です(陸上のトラックで反時計回りに回る場合、右足が外脚で左足が内脚になります)。
※この文章だけでは説明が難しいので、正しい股関節の使い方やこの症状でお悩みの方がいましたら是非とも当院にご相談ください。

東洋医学(鍼灸)と整体による治療法

腱が引っかかる事による炎症を起こしている場合、筋膜だけでなくさらに腱・靭帯が付着している「骨膜」上の”ゆちゃく”(炎症による)をはがしてあげる事が重要です。
整体で行なう場合は、本当に「骨の周り」を、そして鍼灸でアプローチする場合は、骨周りの組織を「削ぎ落す」ようにして、ゆちゃくをはがしていきます。
治療期間は(もちろん、その人によりますが)、大体3週間~1か月ほどで改善される方が多いようです。

先天性股関節脱臼

近年は少なくなりましたが、生まれつき股関節の作りが十分でないために股関節がしっかりはまってない症状です。

症状

股関節の受け皿(骨盤側の股関節部分)が生まれた頃からしっかりと出来ず、関節が通常の位置より上に出来てしまいます。脚の長さは左右あまり変わらないのですが、関節の高さの位置が違うため、しっかりと歩くことが出来ません。一番分かりやすい判別方法としては上向きで寝た状態において膝を曲げて立てた時、膝の高さの違いがでます。関節にかかってくる負担も通常とは異なるため、将来的に関節が変形し歩くことが困難になり痛みを伴います。

原因

この症状が起きるのは圧倒的に女の子の赤ちゃんに多いです。
昔はこの症状を起こす原因として関節をしっかり開かないおむつが原因と言われていましたが、最近では原因の1つとして子供が生まれてくる親や子供の栄養が不足していたり偏りがあったりすることによって起きると言われています。
そこで最近ではあまりみられなくなってきました。

対策と治療

子供が生まれたら地域の検診などによって「関節がしっかり出来ているか」の検査が行われるので子供の健康診断には必ず行ってください。もし、見つかった場合医療機関にて股関節の成長に合わせて観察をする事と、股関節がはまりやすいしっかり開いた位置で固定する装具をつけます(リーメンビューゲル)。
検診などで早期に発見され、治療をすることによって症状はほぼ無くなりますが、通常の関節と違い少し強度が弱いので、大人になっても時々レントゲン写真を医療機関でとって観察することが大切になってきます。

東洋医学(鍼灸)と整体による治療法

先天性股関節脱臼の場合、関節がしっかりはまっていないため、まわりの「筋肉」が代わりに支える事になります。
そのため、普通の人に比べて股関節回りの筋肉が常に緊張状態にあるので、疲れやすく炎症を起こしやすいのです。
このような場合、股関節回りはカチカチに固まっており、筋肉は硬結だらけになっています。
(当然、股関節の可動性自体も悪くなっています。酷くなると股関節が30度くらいしか開かなくなってらっしゃる方もいます。)
この硬結も、いわゆる「膜の癒着」の一種ですので、時間はかかりますが丹念に1つ1つ緩めて行く事によって、可動性も良くなり、日常の立ち振る舞いも楽になられる方が多いです。
重症な方は、お腹の中にあるインナーマッスルである「腸骨筋」「大腰筋」なども
固まって動かなくなっていらっしゃいますので、まずはこの筋肉からアプローチしていく必要があります。

大腿骨頭すべり症

股関節の丸い部分がずれてしっかりと股関節が動かせなくなる症状です。

症状

成長段階の子供(だいたい小学校の頃)の子供に見られます。関節を形成している股関節の丸い部分がずれるため、立ったり歩いたりした時に股関節に痛みが出てきたり、関節が上手に動かせなくなります。子供の時に起きる症状なので御両親の方は子供がしっかり歩いたり走ったり出来るか、脚を引きずって歩いたり変な歩き方をしてないかしっかりと観察してあげてください。

原因

大人の骨と違い、子供の骨は成長します。ももの骨(大腿骨)の上の部分は股関節を作っている部分で丸くなっています。この丸くなっている部分に骨端線(こったんせん)と言われる成長軟骨があります。軟骨なので骨のしっかりとした物ではないので、急激な成長により体重が支えられなくなったり強い衝撃がかかったりしてこの成長軟骨の部分で骨がずれていきます。子供の成長が中学生くらいまで続くので小学校から中学校にかけてこの症状は起きます。

対策と治療

成長期間に起きる症状なので、この時の子供の成長をしっかりと見守ってあげることが大切です。そして、歩き方がおかしかったり痛みを訴えたりしている時は医療機関にての検査が必要になってきます。医療機関にて大腿骨頭すべり症が見つかった場合でも症状が軽くずれ方が軽度であった場合は経過観察として時々レントゲン写真の検査をしてずれ具合のチェックが必要になります。
もし、ずれ方が大きい場合には手術的にずれを治してボルトで留めるなどの処置が必要になる場合があります。
成長が終わり、成長軟骨がなくなってもこの症状があった方は成人を迎えたり、ある程度年齢を重ねたら小さな変形が見つかったりすることもありますので、長い目で観察してあげることが大切です。この事は医療機関としっかりと相談し治療を行って下さい。

東洋医学(鍼灸)と整体による治療法

お子さんの場合、大人に比べて筋膜・骨膜の癒着は、緩みやすいので施術は比較的短時間で済みます。
歩き方がおかしい場合、整体のテクニックによって、まず重心のズレを修整していく必要があります。(多くの場合股関節や骨盤だけでなく”首”のズレがありますので、身体の上の部分にある関節から順に調整をしていきます。)
重心を整えてあげると全身の緊張が抜けてきますので、子供の場合、これだけでかなり歩きやすくなっていくのですが、それでもまだ歩きづらさや、痛みがある場合は、直接股関節回りのゆちゃくを見つけ出し、そこにある屈筋・伸筋両方の筋膜に対してアプローチしていきます。

ペルテス病

先ほど説明した股関節の丸い部分の血流が何かの原因で悪くなり、栄養が行き届かなくなったことで弱くなり丸い部分が潰れていく症状です。

症状

10歳くらいまでの成長期の子供に多く、はじめは股関節の軽い痛みと脚を引きずって歩くなどの症状が出てきます。特にあぐらをかいたりするなどの股関節のひねりの動きに対して制限が出てきます。子供におかしな症状が出てきましたら医療機関にて相談して下さい。

原因

明らかな根本原因は不明ですが、骨の中に通っている栄養血管がふさがり栄養が行き届かなくなった股関節の丸い部分が弱くなり、骨の弱い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のような状態になります。結果的に体重を支えきれなくなり、骨の丸い部分は形を失い潰れていきます。

対策と治療

おかしな事があった場合、早めに医療機関にてレントゲン撮影やMRI等によって検査が必要です。見つかった場合は治療としては股関節にかかる負担を減らすことが必要です。股関節にかかる負担が減ると徐々に股関節部分の血流が改善し、栄養の行き届かなかった部部分に栄養が行き届き関節の部分が治っていきます。このために、医療機関では股関節に負担のかからなくなるような装具を作り、使用することが大切です。この症状が起きた場合、治っても将来的に股関節の変形が起きやすくなることがありますので、成人を迎えた頃や将来的に股関節の状態をチェックする意味で検査が必要になることがあります。医療機関でしっかりと相談し今後の治療をすすめてください。

大腿骨頭壊死

先ほど説明したペルテス病は子供の時に起きる病気ですが、これは大人になってから起きる病気です。股関節の丸い部分が弱くなり崩れていきます。

症状

大腿骨頭壊死が起きる初期では痛みを感じません。しかし、症状が進行すると関節の形が崩れていきますので、しっかりと歩くことが出来なくなります。関節の形が崩れると次第に痛みを伴うようになり股関節が動かせなくなります。

原因

アルコールの大量摂取、内科的な物やステロイドなどの薬物を使っていた事による事などの様々な原因がありますが、原因がはっきりしない物があります。股関節の丸い部分に通っている血管がふさがれ、栄養が行き届かなくなり関節の丸い部分が壊れていきます。

対策と治療

子供の時に起きるペルテス病とは違い、成長と共に回復していく物ではありません。日常的にアルコールの飲酒に関しては飲み過ぎないように気をつけることと、股関節がおかしくなり、歩きにくくなったら医療機関の受診をおすすめします。
自然に治るものではないので、症状が悪化した場合、壊れてしまった股関節を取り除きチタニウムやセラミックなどの素材で出来た人口の股関節に取り替える手術が必要になってきます。この病気に関してはしっかりと医療機関と相談し今後の治療やそのあとの事について相談して下さい。

東洋医学(鍼灸)と整体による治療法

医療機関による診断を受ける事が前提ですが、病院での治療に加えて同時並行的に東洋医学の施術を受ける事は非常に、回復を早めます。
壊死の直接の原因は「血流不全」ですので、これに対して整体によって体のバランスを整え、鍼灸によって、ゆちゃくをはがし、流れを良くしていく事は、とても有効に働きます。

変形性股関節症

股関節の形が変わり変形し、股関節が使いにくくなるだけではなく痛みを伴い、日常生活に問題が出てきます。

症状

症状が軽いものは痛みがありませんが、あぐらをかいたりする股関節のひねりの動作に制限が出てきます。症状がひどくなっていくにつれ、歩く時などに股関節が上手に動かないために問題が出てきて、進行が進むと痛みが強く股関節が動かなくなり、日常生活に支障が出てきます。

原因

先ほどの文章で紹介した先天性股関節脱臼や大腿骨頭すべり症、ペルテス病などが起きた後に股関節が弱いために年齢を重ねるごとに変形が起きてきます。他にも股関節に変な使い方や過度な使い方により負担をかける日常が多かったかたにも現れます。おおよそ成長が終わり、30代頃より体全体に少しずつ老化現象が起きるために修復機能が回復機能より上回り変形が徐々に現れます。

対策と治療

股関節の使い方で先ほど説明した弾発股が起きるような変な使い方をしないことと、股関節周りの動きと筋肉の柔軟性、関節を支える筋力を落とさないことが必要です。そして、子供の時に起きた股関節の病気を持っている方は30代頃より普通の人より変形が起きる確率が高くなるので、異常を感じたら医療機関にて検査をし、変形がおきているかどうか、変形の度合いはどうかなど状態をしっかりと理解することが大切になってきます。自分自身の股関節の状態を理解し、うまく症状と付き合っていくことにより変形の進行をゆっくりさせることは可能です。
股関節の変形が強い時に医療機関では人工関節の手術をすすめることがありますが、人工関節の手術は日常生活に支障が出た時に回復させるとても良い手段です。よく、「手術はしない」と頑固に脚を引きずりながら変形性股関節症で日常を送っている方がいますが、歩き方がおかしく体を曲げながら生活しなくてはならないために股関節の症状ばかりだけではなく、背中を曲げたことにより腰や首の変形が起きて様々な症状を引き起こす原因となりますので、しっかりと医療機関と相談しながら将来の事を考えた治療のプランを進めていくことが大切です。

東洋医学(鍼灸)と整体による治療法

すでに変形してしまった関節を、元に戻す事は出来ませんが、整体により体のバランスや歪み、重心を整え、東洋医学によって血流を改善させることで、「原罪の痛み」を軽減させることは可能です。
またこれらの処置を病院での治療に加える事で、進行を遅らせる事にもなります。
痛みをお持ちの方は、変形だからといってあきらめずに、是非一度当院までご相談頂ければと存じます。

他の原因で股関節に痛みが出るもの

今まで紹介してきた物は股関節や股関節周囲に原因があり痛みを出す物でしたが、腰からお尻の中を通っている坐骨神経や骨盤の部分になる仙腸関節が原因で股関節付近に痛みを出すものがあります。
詳しくは腰の部分にありますので、ご覧ください。

関連ページ:腰の痛み

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